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  Today Is My Birthday 

Berryz工房 2006/08/06 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
雅の13歳の誕生日に合わせて書いた「りしゃみや」ものです。

2005年8月25日掲載。

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「みや、お誕生日おめでとー!」
「ありがとう!嬉しい~!」

音響の良い部屋に声がこだまする。ここはいつも使っているレッスン場。
明後日、明々後日に控えたW(ダブルユー)さんとの合同コンサートの千秋楽に向け、あたしたちBerryz工房は最終調整に入っていた。
もちろんだいたいの振り付けや出番はすでに頭に入っているけれど、ツアーの途中から変更された点だってあるし、ダンスってのは間を置くとすぐにキレがなくなってしまう。
毎日の練習がたとえキツくても、結果的にはそれこそが、いや、それだけが、
落ちたキレを取り戻したり、あるいはケガして治療するのにかかったりする手間を省くための最短距離なんだってことを身をもって学ぶ毎日だ。
あと千秋楽にミスしてWさんに迷惑かけたりするのも絶対ヤだし、今回あたしなんかはすっごく見せ場をもらってるんだからちゃんとしないとね。

そんなレッスンの後、あたしのためにみんなが開いてくれたささやかなパーティー。
マネージャーさん、スタッフさんたちまでお祝いしてくれる。
Berryz工房ができて1年半、メンバーのお誕生日はみんなでお祝いするってもうわかってはいるけれど、こうしてみんなに実際に祝ってもらえるとやはりとても嬉しい。
みんなもとっても楽しそう…まぁ、まあさんなんかはパーティーのごちそうの方に夢中みたいですけど。

乾杯をして、楽しく食事もした後、ふとあたしは考えた。
13かぁ…12と何が違うんだろう。まぁ間違いなく小学生ではないし、こないだ習ったけど「ティーン」ってのは13かららしい。
でも他に何が違うんだろう。イマイチピンとこない。
他のみんなはどうなのかな。フロアの他の「ティーン」たちを見てみると…

そういえば学校の宿題がまだ終わってないと気にする佐紀ちゃん
それを「そんなんどーにかなるって!」と励ましつつもちょっと冷や汗をかいているももち
食後に出された紅茶を話題の糸口にして友理奈と話そうと近づこうとするも、足が滑ってこぼしてしまう千奈美
そして誰よりも先に食べ始めたのにまだ食べているまあさん

…うーん、あんまり参考にならないような気がするなぁ。

そうしてフロアを見渡していると見慣れないものが目に入った。
いや、見慣れないと言うと違うか。見慣れてはいるけどいつもと様子が違うのだ。
梨沙子。Berryz工房の元気印とも言っていいくらい、いつもははしゃぎまわる彼女が、
ダンスレッスン場だけでなくこの建物まるごと遊び場にして――しばしば怒られても懲りずに――遊びまわるほどの彼女が、
レッスン後のパーティーにおいていつもの半分も口をきかない。表情も暗い。
体操座りで腕を膝の前で組み、虚ろな視線を前方に向けながらじっとしている。
具合でも悪いのかな?そういえばさっきのレッスンでもどこか集中できてなくて怒られてた。なんかちょっと昔の舞波みたいに。

あたしは梨沙子に話しかけた。同じグループなんだからいっつも気持ちは通じ合ってないと。
こういう普段の会話が大事なんだよね。

「梨沙子、どうしたの?具合でも悪いの?」
「…なんでもない」

あたしの接近を知って一瞬パッと顔がほころびかけたけど、すぐにさっきの暗い顔に戻ってこの返事。
なによ。そんな顔されたらいっそう気になるじゃない。あ、もしかしてかまってほしいのかな?

「なんでもないワケないじゃん。さっきだっていつもの梨沙子なら簡単にできるステップ間違えてたし。あたしちゃんと見てたんだよ」
「…」
「ねぇどうしたの?話してよ。千秋楽前にして問題があったら大変だもん。ね?教えて」
「…みやにはどうしようもないもん」
「え?何?どういうこと?」

他のみんなもこの空気を察したようだ。気を利かせて食器の片づけやらゴミ捨てやらで部屋からいなくなってくれたのはスタッフさんたち。
後にはBerryzメンバーだけが残る。

「え?どうしたの?梨沙子?」
「そんな顔してちゃかわいいお顔が台無しだよぉ」
「そうそう、みやの誕生日なんだからパーッと」
「あ、誕生日と言えば『Today Is My Birthday』って歌があったよね!あれかけようよ!」

みんなが梨沙子を励ます。でも梨沙子の表情は一向に明るくならない。
いや、むしろこれは…あ、やばい、怒ってきてる…。
いち早く梨沙子の感情の変化を読み取ったあたしは、みんなを制止しようとした。でもわずかに遅かった。

「…それが、ヤなんだもん」

静かな、しかしとてつもなく低く凄みのある声が、それに全く似つかわしくない可憐な唇から漏れ出す。
これはやばい。本格的に怒った。あたしにはすでに梨沙子山の噴火への鳴動が聞こえるようだった。
みんな逃げて!そう叫びたい気分。なのにそこに…

「なにがヤなの?ちゃんと言わないとーだっめ~♪」

茶化したような声が。ちちち千奈美っ!あんたなんで火山にミサイルぶち込むようなことするのよっ!
さっきみんなを静止しようとしたときに千奈美だけでも抑えておけばよかった。
あたしは後悔した。でも時既に遅し。今度こそ火山が噴火する。

「みやのお誕生日だからヤなの!みんなあたしの気持ちも知らないで!ばか!!!」

梨沙子は駆け出した。制止するみんなを振り切ってレッスン場から、建物から。
みんなあっけに取られていたが、我に返るや否やざわめきだす。
梨沙子を追いかけようか、マネージャーさんやスタッフさんに相談した方がいいんじゃないか、
そんなみんなにあたしは静かに言った。

「梨沙子はあたしが連れて帰る。他の人たちにはもう帰ったってことにしといて」

あたしの真剣な目を見て察してくれたのか、まず佐紀ちゃんが快く許してくれた。
みんなも協力してくれるとのことだった。今更ながらにいい仲間を持ったと思った。

それからあたしは梨沙子を探した。2人で遊びに行った渋谷、原宿、その他あらゆる思い出の場所を巡った。
しかし梨沙子は見つからずじまい。あきらめて携帯で佐紀ちゃんに連絡を取ろうとした。しかし…

電池切れてる!

そういえば今日は朝から友達のおめでとうメールの嵐だったし、その返信から始まったメールのやり取りも大量にしていた。
さらに言えば「充電器をコンセントから抜きましょう」というささやかなエコ活動もしてるんだけど、
おっちょこちょいなあたしは、もしかしたらちゃんと充電しないまま携帯を持ってきちゃったのかもしれない。

でもそんな原因はどうでもよくて、今重要なのは、これじゃ佐紀ちゃんから、さらには梨沙子から連絡があってもわからないってことだ。
コンビニで充電しようかとも思ったけど、そろそろ夜も更けてきたし、中1の女の子1人でウロウロしてたら補導とかされかねない。
まず帰って、佐紀ちゃんや他の人たちに連絡することにしよう。もしかしたら梨沙子も戻っているかもしれないし。

そう考えて家路に着くあたし。家までもう少しのところにある公園の横を通り過ぎたとき、見慣れないものが目に入った。
いや、見慣れないと言うと違うか。見慣れてはいるけどいつもと様子が違うのだ。
公園のブランコ。もう子供たちはとっくに家に帰っていて誰もいないであろうこの時間。
ブランコを漕ぐものがいた。ブランコの向こうにある電灯による逆光の中、夜目にも見事なシルエット。
ふわふわの髪、かわいらしい鼻から華奢な喉にかけての芸術的な曲線。そして理想的なバランスを備えた手足と身体。
本来こんなものを持つ年齢の人間はブランコ遊びとはもはや縁のないはずだけど、あたしは全然不自然さを感じなかった。
だって今そこにいるのは紛れもなく小学5年生、11歳の…

「梨沙子!」

あたしは、呼びかけた。しかし梨沙子は返事をしない。こちらを見ようともしない。
あたしはブランコの正面に回り、手ごろな鉄棒に座る。梨沙子を見つめる。
梨沙子は相変わらず何も言わない。ただブランコを漕ぎ続けるだけ。
きこ。きこ。しばらくあたしたちの間の空間はその音だけに支配される。
しかしこのまま黙ってばかりもいられない。あたしの声が沈黙を打ち破る。

「さっきの…あたしの誕生日が嫌って、どういうこと?」
「…」

梨沙子は相変わらず答えない。答えがない、というわけではないことは一目見ればあたしにはわかる。
ものすごく何かを言いたそうな、でも口が開かないという顔してる。「むー」っていう擬態語がすごくピッタリな顔だ。
こんな状態では何かを説明してもらおうとしても無理なので、もっと返答が簡単な質問に切り替える。

「あたしのこと…嫌い?」

WH疑問文からYES/NO疑問文にしてみた。これで何も返事がなかったらまた何か手を考えなければならないのだが…

「ううん。そんなことない」

その心配は杞憂だったようだ。何とか口を開かせることには成功。あとは少しずついろいろ聞き出していこう。

「誕生日が嫌いなの?」
「…」

また無言になった。でもこれは「答えたくない」というより「どう答えていいかわからない」という感じ。
ブランコも漕ぐのを止めたので次第に速度を落とし、やがて止まった。梨沙子はしかし、そのまま降りずに座っている。
あたしはもっと問い方を詳細にしてみることにした。なんか探偵さんか刑事さんみたいだ。

「あたしは誕生日好きだよ。みんなで集まって楽しいし。あ、ほら、梨沙子の誕生日もすっごく盛り上がったじゃん」
「うん」
「梨沙子は自分の誕生日もヤなの?」
「…自分のはいいの」
「じゃあ他の人のは?」
「みんなのもいい」
「じゃあ、あたしの誕生日が嫌いなんだ」
「…うん」
「なんで?」

ぽつぽつと語りだす梨沙子。しかしあたしは思わずWH疑問文を再びぶつけてしまっていた。
でも無意識のうちにわかっていたのかもしれない。梨沙子にここまで口を開かせた今ならもう大丈夫なのだと。
再び訪れたひとしきりの沈黙の後、ついに梨沙子が答える。

「みやと…歳が離れちゃうから」

あたしを見ては目を伏せて、そしてまたちらりと上目遣いで盗み見て…そうした動作を繰り返した後、顔を真っ赤にしてそう言う梨沙子。
もっと深刻な悩みかと思っていたあたしは拍子抜け。思わず

「そ、そんなことで?」

と返してしまう。すると梨沙子は

「だってしょうがないじゃん!!!!!」
「いや、だって…たった2つしか離れてないし」
「その2つが問題なの!」

先ほどまでの無口っぷりがまるでウソのようにまくし立てる。

「Berryzのみんなは、あたし以外み~んなみやと同い年になれるんだよ?学年が同じちなっちゃん、まま、舞波っちはもちろんだけど、
学年が上の佐紀ちゃんやももちだって今はまだ13で今日からしばらくみやと同い年だし、年下のゆりだって昨日まではみやと同い年だったんだよ!なのに…なのに!」

そこで梨沙子は言葉を切った。なるほど言われてみればそうだ。全然気付かなかった…。
あんまり物事を考えてないように見える梨沙子だけど、いつの間にやらしっかりと、いっちょまえに考え事もするようになったのね。
あたしのそんな感慨をよそに、梨沙子はブランコを再び漕ぎだし、前後に揺られながら続ける。

「あたしだけ、あたしだけみやと一緒になれない!いつまでたっても一緒になれない!
このブランコみたいに、みやに近づいたと思ったらまた離れて、しばらくしたらまた近づいて、また離れて…その繰り返し。
あたしの誕生日はみやに1つ近づける日だから嬉しかった。でもみやの誕生日は、あたしがみやからまた離される日なの。だからヤだ」

理路整然と語る梨沙子。あたしはただただぼーっとするばかり。いつもと全く逆だ。

「梨沙子…」
「へへっ、あ~話したら何かスッキリした。ねぇねぇみや、ブランコって楽しいよね」
「梨沙子…あなたって…」

梨沙子の話はそこでおしまいだった。再び沈黙が訪れた。でも今度の沈黙はさっきのとは違う。
梨沙子がそこまであたしのこと想っていてくれたなんて。
いつもは、そして今はこんな無邪気な梨沙子が、あたしのことを想ってあそこまで胸を痛めていたなんて。
愛しい気持ちが胸を突く。目の前にいるおっきな子供を抱きしめたくなる。
気持ちが思考より先に身体を動かす。口を開かせる。

「…梨沙子」
「ん?」
「トシなんか…関係ないじゃん」
「え、でも…」
「歳が違うから、あたしと離れてるって感じたんだよね?」
「うん、そうだけど」
「じゃあ…」
「?」

恥ずかしさはなかった。身体が自然に動いた。
ブランコを止めて降りていた梨沙子を抱きしめる。

「みや!?」
「そんなの感じるヒマもないくらいずっと一緒にいてあげる!」
「みや…」
「それならいいでしょ?ずっとずっと、梨沙子を離さないから!ね?」
「…うん!あたしも!あたしもみやから離れない。ずーっと一緒にいる!」

13歳になったこの日。あたしはいろんな人からプレゼントをもらった。嬉しかった。でもこれほど嬉しいプレゼントはなかった。
いや、今日に限らず、これまでの誕生日の中でも一番のプレゼント。今までで一番の誕生日。神様に感謝しなきゃね。

だってこんなステキな、大切な人ができたんだもの!

嬉し泣きする梨沙子を抱きしめて、あたしは心の中で高らかに叫んだ。

Today Is My Birthday!

~FIN~
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