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  千奈美と友理奈のバレンタイン'06 

Berryz工房 2006/08/07 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
バレンタインものです。この前の「桃子と友理奈のバレンタイン'06」と前後編でつながっています。
こちらの後編では熊井友理奈と徳永千奈美ののCP「ちなゆり」色が強め。なお物語は千奈美視点で進みます。

2006年2月14日掲載。

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ばかばかばか!なんで?なんで?
意味わかんないよ!なんであんなことしてんの?
いいよ!好きにしてよ!あの子がいいならそっち行けばいいじゃん!

悲しい。すっごく悲しい。悲しさから逃げるように走る。走る。でも逃げられない。足の速さなら自信があるのに、どうしても逃げられない…。
どうしようもなく胸が締め付けられる。涙がこぼれる。笑顔にかけては誰にも負けないのが千奈美のウリなのに、今は全く笑えないよ。
熊井ちゃんがビルのどこ探してもいないから帰ろうかと思ったら桃が階段上がっていくのが見えて、
桃は熊井ちゃんを見つけるのがうまいからきっと熊井ちゃんは上にいるんだろうと思った。
でもすぐ上に上がったらなんか桃の後をつけてきたみたいでヤだし、
千奈美は熊井ちゃんのこと信じてたから桃とお話する時間くらい待ってもいいかなって思って。
それでもうそろそろいいかな?って頃になって上がってみたら

…熊井ちゃんが…桃に…キス…

あぁっ!また思い出しちゃったよぉ。廊下ですれ違うスタッフさんたちが何事かとこっちを振り返る。泣きながら走る千奈美を見る。
でも知らないもん。一人になりたい。誰もいないところで思いっきり泣きたい。
レッスン場はスタッフさんとかいるだろうし、更衣室も誰か戻ってくるかもしれないし…
走って走って、千奈美がたどりついたのは、階段を下った一番下にある地下室。
電気は点くからきっと物置とかに使うんだろうけど、カギはずいぶん前に壊れてしまったらしくて誰でも入れるようになってる。
でも普段こんなところには誰も来ないから、ヤなことや悲しいことがあったときに千奈美はちょっと前からここに来るようにしてるの。
やっぱり自分のとりえは笑顔だと思うから、あんまり泣いた顔とかそういうの他の人に見せたくないし。
あとここの扉って結構分厚くて、思いっきり泣いたり叫んだりしても外には聞こえないみたい。
この建物自体がそもそもレッスン場だから防音のしっかりした作りなのかも。
詳しいことはわかんないけど、そんなわけでここは千奈美の秘密の場所…。

その秘密の場所の隅っこに座り込む。さっきのことがまた頭の中をぐるぐる回る。
苦しい。胸が張り裂けそう。なんでこんな気持ちにならなきゃいけないんだろう。
なんでこんなに千奈美が苦しまなくちゃいけないんだろう。

「熊井ちゃんの…ばか」

イライラを唇に乗せてみる。でもその名前を出した瞬間、さっきよりもっと激しい胸の痛みに襲われる。
熊井ちゃんのことを考えるだけで、熊井ちゃんって名前を思い出すだけでどうしようもなく苦しい。
いっそのことキライになれたらいいのに。それなら楽になれるのに。

でも、なれない。

熊井ちゃんのことを考えれば考えるほど苦しいんだけど、でもやめられない。熊井ちゃんのいない世界なんて考えられない。
嫌いになろうとすればするほど、千奈美がどれだけ熊井ちゃんのこと好きだったか確認しちゃうばかり。
どうすればいいんだろう…千奈美はどうすればこの苦しみから抜け出せるんだろう…
誰か…誰か助けて!千奈美を助け出して!その思いが通じたんだろうか。

ばたん!とドアが開く。そこから入ってきたのは…

「ちぃ!」

今一番会いたくて、でも会いたくなかった人。会いに来てほしかったけど、今のこんな千奈美は見せたくなかった人。

「ちぃ…あ、あのね」
「来ないで!」

自分でも驚くほどの声が出た。ほんとは熊井ちゃんのところに今すぐ行きたいのに。駆け寄って抱きつきたいのに、唇が勝手に言葉を紡ぐ。

「どうせ熊井ちゃんは桃が好きなんでしょ?仲良くやればいいじゃん」
「あ、あれはももちが…」
「人のせいにするの?サイテー!」
「…」

熊井ちゃんが、熊井ちゃんが黙っちゃった。何やってるの千奈美!早く何とか、何とかしないと取り返しのつかないことになっちゃうよ!

「ちぃ…わかった」
「わ、わかったって?」

こ、これって…「わかった。じゃあちぃとはもうこれっきりだね」ってこと?やばい、やばい、やばい!最悪の展開じゃん!

「正直に言うね、あたし…」

や、やっぱりそうだ!「あたし、ちぃのことあんまり好きじゃないの。ももちが好きなの」って言おうとしてるんだ。
どうしようどうしよう!何とかしないと…この流れを何とかしないと…どうにかしないと!
混乱しきった頭とは逆に、口から出てきたのは結局一番シンプルな想い。

「「あなたが一番好き!」」

…え?なんか…なんか熊井ちゃんも言ったみたいだけど、なんて言ってるんだろう…完全に被っててよくわかんない…

え?被る?

普通被ってない箇所があったら聞こえるはずなのに、完全に被ってて聞こえないってことは…もしかして…全く同じこと言ってるの?
ってことは…熊井ちゃんも千奈美のことを…?そう考えると胸がきゅんとした。いてもたってもいられない。

「好き!」
「好き!」

千奈美がまず先に熊井ちゃんに向けて動き出す。熊井ちゃんも応えるようにこっちに向けて走り出す。お互いの想いを口に出しながら。

「熊井ちゃん…」
「ちぃ…」

抱き合う。しょっちゅうこういうことはしていたはずなのに、何年ぶりってぐらいの感覚。抱き合ったまま熊井ちゃんが口を開く。

「ごめんね…さっき、正直、あたし…浮気してた」
「…」
「でもね、やっぱり気付いたの。ちぃが一番好きだって」
「え…?」
「ちぃがいなくなっちゃったとき、あたしどうしようもなく悲しくって…やっぱりちぃしかいないんだって、気付いたの」
「熊井ちゃん…」

身体を離して、見つめあう。熊井ちゃん大好き。大好きだよ。熊井ちゃんの目に目で合図を送る。
普段はニブい熊井ちゃん、ちゃんとわかってくれるかどうかちょっと心配だったけどちゃんとわかってくれたみたい。
千奈美も目を閉じて、熊井ちゃんを待つ。

~☆

さっきまでは言葉で愛を送っていた場所で、今度は無言でお互いの愛を交換。
うっとり…していたかったんだけど、気付いちゃった。

「あれ?チョコの味がする…」
「あぁ、さっきももちのを食べて…あ」

しまった、という表情の熊井ちゃん。こんなときになんだけど…すっごい間抜けで思わず笑っちゃう。でも笑い事じゃないよ。

「おいしいけど…でもヤだ」
「え?」
「人のチョコの味のするキスなんて…ヤだ」
「じゃ、じゃあ、ちぃのチョコを食べてからもう一回…ってあたし何言っちゃってるんだろ、あ~!」

真っ赤になる熊井ちゃん。かわいい。でもそうだよね、千奈美のチョコで、言っちゃなんだけど消毒して、
それからもう一回…また熊井ちゃんと…楽しみ…。

「じゃあちぃ、チョコちょうだい」

熊井ちゃんが求めてきた。求めて…だなんて、きゃっ恥ずかしい。えーと千奈美のチョコは…あれ?

「な、ないっ!チョコがないっ!」
「えぇっ!?」

肝心のチョコがない。どこに行ったんだろう。確か階段を上るときには持ってたけど、下りてきたときには持ってなかったような…
階段が上りから下りに変わったときというと…あそこだ!

「お、屋上だよ!屋上!」
「行こう!」

地下室を飛び出し階段を駆け上る熊井ちゃんと千奈美。スタッフさんたちがまた何事かと振り返る。
でもそんなのにかまっちゃいられない!屋上のドアを開け、外に出る。ライトに照らされた床を探して、探して、探して…でも見つからない。

「どうしよぉ…見つからないよぉ…」
「ちぃ…」

どうしても見つからない。きっと誰かお掃除の人とかが持って行っちゃったのかも。
しょうがない。また作り直して明日渡せばいいか…そう思おうとするんだけど、やっぱりどうしようもなく残念。
バレンタインにチョコを渡したかったっていう思いはすごく大きい。
加えて桃は熊井ちゃんにもう渡して、しかも食べてもらえたのに、千奈美は渡すことすらできない…。
肩を落とす千奈美を見かねて、熊井ちゃんが抱きしめてくれる。

「ちぃ…気持ちだけでもとってもうれしいよ、ほんとだよ」
「熊井ちゃん…ひっく、ひっく…」

涙が出ちゃう。今日は泣いてばっかり。バレンタインなのに…最悪だよ。最悪の日だよ。
ダジャレでみんなを笑わせて、千奈美もそれで笑顔になれて…っていうのが理想なのに、今日の千奈美はダメダメだよ。
屋上はいよいよ気温が下がってきたので、熊井ちゃんに肩を抱かれて建物の中へ。がっかりしたまま荷物を取りに更衣室に戻る。
すると熊井ちゃんがテーブルの上に置かれている何かに気付く。

「あれ?何これ?」

そこには見覚えのある包み…ってか千奈美のチョコが。何でこんなところに???
あれ?気のせいかな、朝に千奈美が結んだよりもリボンの結びがきれいになっているような…
それに屋上で落っことしたはずなのに、汚れも全くない。不思議だなぁ。
あとなんか紙切れが一枚置いてあるけど…何はともあれ、チョコが戻ってきたので、改めて…

「熊井ちゃん、千奈美の想い…受け取ってください」
「ありがとう…」

両手で包みを熊井ちゃんに渡す。熊井ちゃんもはにかみながら受け取ってくれる。
立ったままってのもなんだから、そこにあったソファーに並んで座る。リボンをほどいて、チョコを取り出し口をつける熊井ちゃん。
よかった…本当によかったぁ…と思ったけど、千奈美は気付いた。

「熊井ちゃん、千奈美へのチョコは?」
「んぐぐっ」

慌ててチョコをのどに詰まらせそうになる熊井ちゃん。まさか…

「が、学校に忘れてきちゃいました…はい」
「えぇぇぇぇ~~~っ!!!」

じゃあ今日渡すよりもむしろ明日の方が交換するならよかったんじゃん!千奈美がさっきあんなに慌てて探したのは何だったの?

「そ、そんな大声出さなくても」
「だって…ひどくな~い?」
「ご、ごめん…」

しゅんとしちゃう熊井ちゃん。それを見るとなんかそれ以上責める気はなくなったけど…ん、ちょっと待って。

「じゃあ、桃にも渡してないの?」
「うん、それで忘れたって言ったら、ももち、あたしの唇についたチョコを…」

なるほど…ってかそれって桃の計算なんじゃないの?たぶんそれ熊井ちゃんがチョコ持ってきててもやってたと思うよ。

「なるほど…そっか…そうやるのか…」
「…ちぃ?」

考え込む千奈美を不思議がって熊井ちゃんが身を乗り出してきた。それで千奈美のやることは決まった。
顔をあげ、熊井ちゃんの唇に再び唇を重ねる。

~☆

顔をゆっくり離す。頬がすごく熱くなってる。熊井ちゃんも真っ赤になってる。

「ちぃ…」
「これで、桃と同じだよね」
「そ、そうだけど」
「じゃあここから引き離しちゃうもん」
「え?」
「今度は熊井ちゃんから、千奈美に…ね?」
「で、でも…」

もたもたする熊井ちゃん。やっぱり基本はへたれなのかなぁ…しょうがない。じゃあこれで!
ソファーから立ち上がり、自分のカバンに歩み寄る。中から午後の紅茶を取り出す。
小首をかしげている熊井ちゃんの前でそれを一口含み、飲み込む。そして再びソファーに座る。

「ちぃ…?」
「熊井ちゃん、甘いもの食べてのど渇いたでしょ?」
「え、別に…」
「渇いたでしょ!」
「は、はい…渇きました」
「紅茶、好きだよね」
「は、はい」
「じゃあ…ほら、今なら紅茶の味だよ」
「ち、ちぃ…」
「…ほしくないの?」

密かに鏡の前で練習してた上目遣い。密着してるし、この機会に使っちゃえ!
効くかどうか不安だったけど、熊井ちゃんの胸から聞こえるドキドキ具合からして大成功みたい。

「ちぃ…じゃあ、いただきます…」
「うん…ちゃんと味わってね」

熊井ちゃんが顔を近づけてくる。千奈美も瞳を閉じて、熊井ちゃんの背中に両腕を回す。
お互いの身体がゆっくり傾いて…ソファーの上に横たわる千奈美。あ、チョコをこの部屋で渡してむしろよかったかも…。

数十分後。ソファーから立ち上がって、そろそろ帰ろうとしたところでさっき置いてあった紙切れに気付いた。そこにはこう書いてあった。

「告白は扉を閉めてからしてね。あ、でも歌の参考になったからいっか。ありがと☆」

2人して真っ赤になる。翌日、熊井ちゃんと千奈美が手紙の主にお礼の言葉とチョコを贈ったのは言うまでもない。



~FIN~
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