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  安心感 

Berryz工房 2006/08/07 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
Reactorでは前後編に分けたこの作品ですが、ここでは一つにまとめることにしました。

前編は2006年5月27日、後編は28日掲載。

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「はぁ、疲れた。休憩しよ」
「え~?さっきしたばっかじゃん」
「そだっけ」
「そうそう!もうちょっと頑張ろうよ」
「ねぇ、もう一回しよう」
「だ~め。今いいとこなんだから」
「も~熊井ちゃんのいじわる~」

目の前でしきりに休憩を誘ってくるちぃ、それを振り切って問題集を解くあたし。
今日のあたしたち2人はファミレスで中間テストの勉強中。
Berryz工房としての活動がこれからまた夏に向けて忙しくなるから、今のうちにたっぷり勉強しておかないとね。
特にあたしは中間テストっていうのは初めてだからしっかりやらないと…なのに

「ねぇねぇねぇねぇねぇ」
「も~集中できないじゃんかぁ」
「む。熊井ちゃんは千奈美より問題集の方が好きなんだね」
「そ、そんなこと言ってないじゃん。たださぁ…」
「ただ何だぁ」
「ほら、勉強ってさ、わかると楽しいじゃん?結構今いいとこだからさ、もちょっと待って、ね?」
「…へぇ~。ステージの上の熊井ちゃんはニセモノなんだね」
「な、なんで?なにいきなり?」
「おうちじゃ素直な優等生~♪って言ってるのに~」
「それは歌詞じゃ…」
「おうちじゃなくても素直な優等生だぁ!うそつき!」
「そ、そんなこと言われても困るし…」
「じゃあさ、休憩しよ。ってか遊ぼうよ。ねっねっ」

目の前の(一応)中学生活の先輩は勉強を教えてくれるでもなく、一緒に勉強するでもなく、しきりに遊びたがってる。
今日のこの勉強会をしようって言ってきたのはあっちなのに、全くもう。
確か月曜日のレッスンが終わった後、あたしに声をかけてきたんだよね…



「ねぇねぇ熊井ちゃん、今度の日曜ひま?」
「うん」
「じゃあさ、遊び行こうよ」
「あ、でもその頃ってちょうど中間テスト中だから勉強しないと」
「え~いいじゃん、一日くらい…」
「だめだってば。中間テストって初めてだから勉強しないとだし」
「勉強の合間の息抜きにカラオケとかどうですか?お客さ~ん」
「なにそれ~もうちぃったら。だめだよ!勉強しないと」
「そこをなんとかさぁ」
「ちぃだってテストあるんでしょ」
「うっ…そ、それは…」
「ね?」

一旦は引き下がるかと見えたちぃ。でも再び身を乗り出してきて…

「…じゃあさ、千奈美と一緒に勉強会しようよ」
「勉強会?」
「つっても一緒に勉強するだけだけど」
「一緒に勉強かぁ…」
「一人でするより二人でするほうが心強いよ」
「あ、いいねそれ」
「わかんないところあったらさ、教えてあげるし」
「え~ちぃがぁ?」
「何だよぅ。これでも先輩だぞ~」
「は~い。じゃあ"よろしく先輩!"なんちゃって」
「でそれ終わったらカラオケね」
「え~」
「…だめ?やっぱり、だめ…?」
「そ、そんな泣きそうな顔しないでよ!もうそんなに行きたいの?」
「…うん」
「しょうがないなぁ…」

あの日はちぃの誕生日で、朝おめでとうメール打って、レッスン場で会った時にもお祝い言って。
でもなんかちぃは最近ずっと元気なかったなぁ。
だから勉強会とはいえ、一緒にお出かけするなら少しは元気になるかなと思ってOKしたんだっけ…
でもほんと、どうしたんだろ。ヘンだったなぁ。



「…熊井ちゃん、熊井ちゃんってばぁ」
「う~ん…どうしたんだろ」
「どうしたんだろは熊井ちゃんだよ。ねぇねぇ」
「…ふぇ?」
「もう。ぼーっとしちゃってぇ」
「あぁ、ごめんごめん」
「やっぱりさ、熊井ちゃんも疲れてるんだよ。うんうん」
「え、いや…」
「無理はよくないよ。休憩休憩。ね?」
「う~ん…そうだね、じゃあ勉強はここまでにしようかな」
「うんうん!千奈美もそれがいいと思う!」

まぁ、試験範囲もだいたい終わったし、ここで全部するより帰って仕上げるほうがいいかも。
そう思ったあたしはちぃの提案に乗って勉強を止めた。ちぃも同じように止めた。
ちぃは勉強が進んでいたかどうかは知らないけど…ほとんど勉強道具の位置変わってないし。
道具を片付け、ドリンクバーから持ってきた紅茶を飲んで一息ついたところで、ちぃが切り出す。

「ねぇねぇカラオケ行こうよぅ」
「こないだもそれ言ってたよね~」
「だってさ~ほら春のコンサート終わってから結構経つじゃん?」
「そういえば…もうすぐ1ヶ月だね」
「でも夏まではまだまだあるし、やっぱり千奈美歌うの好きだしさ、それに…」
「それに?」
「うぅん、やっぱなんでもない。ねぇ歌おうよー」
「はいはいわかりました。ヘンなちぃ」

あたしたちは会計を済ませてお店を出た。そしてカラオケ屋さんに向かう。
横に並ぶちぃ。なんかもじもじしてる…不安そうな顔…

「どうしたの?ちぃ、具合でも悪い?」
「そんなことはないけどさぁ…」
「なに?」
「うぅん、なんでもない」

ほんとにヘンなちぃ。どうしたんだろ。
そんなことを考えながら歩いているとカラオケに到着。お部屋に入る。

「熊井ちゃん何歌う~?」
「えっと…どうしよっかな」
「熊井ちゃん倖田來未とか歌ってよ」
「え~?無理だって。なんで?」
「だってさ、おんなじ"くーちゃん"じゃん」
「くーちゃん?」
「そ。熊井ちゃんだからくーちゃん。こないだラジオで決めたの」
「へ~。ちぃは?」
「ちーちゃんか…とーちゃん…」
「あははははは」
「もう笑いすぎ~!」
「だ、だってさ、とーちゃんって、あはは」
「も~!くーちゃん早く歌ってよ~」
「はいはい。じゃあ最初はねぇ…」
「くーちゃん♪くーちゃん♪」
「なによ~」
「へへ~、くーちゃん♪」

あたしたち、普段からオフの日にカラオケにはよく来るんだよね。
お仕事で歌ってるし、ボイトレとかでも喉を使ってるのによくやるねぇって言われることもあるけど、
ステージで歌う歌はあらかじめ決まってるし、別の所でボイトレで鍛えた力を試してみたくもなる。あとやっぱり歌うことが単純に好きだしね。
そんなわけでメンバー同士でよく来てたりする。歌う曲はハロプロの曲もそれ以外もあり。
さすがにコンサートで自分たちが歌っているBerryzの曲はそれほど歌わないけど、それ以外なら何でも。
大人っぽい人の曲を歌ってみることもあれば、ミニモニ。さんの曲ではしゃいだりもする…

で、いつも盛り上がるんだけど、それにしても今日のちぃはいつもにも増して大はしゃぎ。
最初「くーちゃんくーちゃん」言ってくっついてきてたと思ったら立ち上がって熱唱したり、
またあたしの横に座ってきたり、正面に座ってこっちを見ながら歌ったり…
なんかちょっと不自然な気もするけど、ちぃに負けじと夢中で歌っているうちにそれは頭のどこかへ。
そして…

プルルルル…

インターフォンが鳴った。あと10分だって。だいたいラスト一曲ずつかな。
ノリノリで歌っているちぃにそれを教えると、ちぃの顔が変わった。何かを思い出したような顔。
ちぃがリモコンを手に取り、真剣な顔つき、手つきで曲を入れる。画面に曲名が出る。

『安心感』

えっ?

たくさん歌ってきたけど、この曲はどちらもここまで入れなかった。
あたしはコンサートで歌っているからだけど、ちぃも別に歌うつもりないんだろうって思ってた。なのにどうして…?
そんな「?」マークを顔に浮かべているあたしに、ちぃが言う。

「熊井ちゃん…しっかり聴いててね」

イントロが始まる。そういえば他の人がこの曲一人で歌うのって見たことないし、参考になるかも。
ちぃの歌に集中する。ちぃの顔も真剣。


ねぇ いつだって
安心したいのよ


ちぃはずっとあたしの方を見て歌う。歌詞完全に覚えてるんだ。


AH あなた あなた あなた
大好きな あなたにちょっとは
ほめられたい


なんかほんとに心がこもってるなぁ…あたしも見習わないと。
ちぃの歌は続き、やがてサビに入る。


ねぇ なんどだって
「好き」と言われたい
ねぇ いつだって
安心したいのよ


今までにも増して想いが伝わってくる。ほんとに好きなんだなぁって…えっ?
ちぃ、もしかして…自分の想いを歌に乗せてるの…?
あたしの表情の変化を見て気付いたのか、ちぃが軽く頷く。
そして歌もラストのサビへ。


ねぇ なんどだって
「好き」と言われたい
ねぇ いつだって
安心したいのよ
ねぇ あさってこそ
あなたが電話をして
ねぇ 母さんに
自慢をしたいのよ


歌が終わった。あたしはちぃの歌に集中してて曲を入れてなかったので、次の曲は流れない。
一瞬の沈黙の後、ちぃが口を開く。真剣な、でも泣きそうな顔。

「今日ね、これ歌いたくてカラオケ誘ったの」
「ちぃ…」
「あたしさぁ、普段はおしゃべりだけど、いざってときに全然言いたいこと言えないんだよね」
「…」
「こないださぁ、誕生日…熊井ちゃんからのメール来るかと思ってずっと起きてたんだよ」
「あ、ごめん…」
「なのに来なくて…千奈美は熊井ちゃんにとってはどうでもいいのかなぁ、って不安だった」
「そ、そんなこと」
「朝起きて学校行く途中でメールあってすっごく安心したけど…でもいったん感じた不安が一日中離れなくて」
「だからあの日元気なかったんだ」
「うん…でも熊井ちゃんに"安心させて"なんてとても言えなくて」
「ちぃ…」
「それに今日も」
「きょ、今日?」
「熊井ちゃん千奈美に全然かまってくれないし、手もつないでくれなかったし…」
「ご、ごめん」
「うぅん、いいの。千奈美が勝手にしてほしいって思ってただけだもん」
「…」
「でもね、ずっと想いを伝えたかったの。で、言えないならどうすればいいかな、って考えたの」
「それで、この曲を…?」
「うん。素直に言えないなら歌に乗せちゃえ!って」
「そこまで考えててくれたなんて…ごめんね」
「謝んなくていいよ」
「でも…」
「千奈美の気持ち、伝わった?」
「う、うん。すっごく伝わったよ!」
「よかった。千奈美さぁ、熊井ちゃんのこと大好きだよ!」

ちぃの顔がぱっと輝く。今までちぃの笑顔は何度も何度も見てきたけど、こんなに嬉しそうなのは初めて。
そんなの見たら…思わず胸がキュンとして

「あたしもちぃのこと、大好き!」

思わず立ち上がってちぃに抱きつく。まだ歌える時間はあったけど、それよりちぃを感じるこの瞬間がもっと大切。

抱き合ったまま、見つめあう。

「熊井ちゃん…」
「ちぃ…」

数分後。身体を離し、部屋を片付けてそのままお店を出る。
お店を出るとちぃがまた横に来る。こうすればいいんだね。

きゅっ
にこっ

手をつなぐとちぃはまたあの笑顔。ちぃの笑顔はほんとにすごくいい。雨の後の太陽みたい。
そういえばちぃって泣いたら泣いたで大雨みたいだから、一人であたしの好きな虹の出る雨上がりの景色ができるなぁ。
そんなことを考えながらちぃと歩く。手をつないでからはすっごい幸せそう。
ちぃ、もう不安は感じさせないからね。2人の安心感、ずっと感じててね。

~FIN~
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