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  星に願いを 

Berryz工房 2006/08/07 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
初めて書いた七夕もの。CPは「ちなゆり」です。また久しぶりに第三者視点で書いてみました。

2006年7月7日掲載。

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「よし!後は明日これを笹に飾るだけっ!」

自分の机で短冊を書き上げて上機嫌なのは徳永千奈美。
前日にならないと何事にも手をつけないというのは学校の宿題でも共通だが、
今の千奈美の顔はそれをやるときとは比べ物にならないくらいに輝いている。

「これで万事オッケーだよね」

安心して机から離れ、ベッドに横たわる千奈美。明日のことを思い描くと楽しみで眠れない…と言いたいところだが、
連日のレッスン、また学校での定期テストの日々は彼女をほどなくして眠らせるに十分だった。

翌日の放課後、やってきたレッスン場の玄関ロビーの笹に短冊を飾りにきた千奈美。しかしそこには先客の姿。

「あたしはね、"虹をたくさん見られますように"って書いた」
「熊井ちゃんらしいなー。あたしは"もうちょっとオトナになれますように"にしたー」
「オトナ?オトナになりたければあたしになんでも聞きなさいよあたしに。さぁさぁ」
「ん?何か聞こえた?熊井ちゃん」
「んー聞こえないねぇ、まぁさん。このへんにちっちゃいオトナでもいるのかなー」
「も~!」

笹のそばでおしゃべりしているのは友理奈、茉麻、そして桃子。
いつもならすぐにその輪の中に飛び込むんだけど、今日はちょっと別。
メンバーの前であの短冊をかけるのは恥ずかしい…みんなちょっとあそこを離れてくれればいいんだけど…
そんな千奈美の願いが通じたのか、笹から離れる3人。しかし願いは半ばしかかなえられなかった。何しろ…

「あ、ちぃだ!」
「ほんとだ」
「おはよー」

3人はどこかへ行くどころか、千奈美の方に寄ってきてしまったのだ。
桃子が興味津々な様子で千奈美の手元の短冊に目をつける。

「あれ?ちぃもお願い事するの?ねぇ何書いたの?見して見して」
「いや、えっと…その…」
「なぁにぃ?なんか様子が変だぞぉ」
「そんな見せるものでも…」
「あ、わかったぁ!」

やはり"オトナ"なのか、勘の鋭い少女は限りなく正解に近い答えを言い当てる。

「"好きな人ともっとラブラブになれるように"でしょ?」
「そ、それは、その…」
「どうなの?どうなの?徳永さ~ん?」

全てわかっているのかいないのか、手に持っていたペットボトルをマイクのように千奈美に向けてくる桃子。
もちろんその場合にも小指が立っているのは言うまでもないが、今の千奈美にはそれに突っ込んでいる心の余裕はなかった。

「ち、違うもん!だ、だいたい"七夕のお願い"でそんなこと書くとか、そんな子供っぽいことするわけないじゃん!」

思わず出した、玄関はおろか廊下に響き渡る大声。誰もがビックリして動きが止まった。
数瞬の後、自分が作ってしまった空気に耐えられなくなり、千奈美は頬を赤く染めつつ無言で奥へと走り去る。

「何あれぇ?」
「さぁ…あ、もうすぐレッスン始まっちゃう」
「やっば~い!行こ行こっ」

千奈美と同じ方向に向かって走り出す友理奈と桃子。
それに続こうとした茉麻、しかし床に落ちている紙切れにふと目を止める。
短冊だ。拾った茉麻はひとしきり考えるような表情をしていたが、やがて微笑を浮かべ、
笹の上部、自分の目の高さより少し高いところにそれをかけて、その場を去った。

レッスンは約1名を除けば問題なく始まって、終わった。その1名とはもちろん…

「今日最悪…ほんとツいてないよ…」
「ちぃドンマイだよ!そんな日もあるってば」
「フリは間違えまくったし、あんなこと言っちゃったし、短冊はなくなったし…」
「短冊?」
「…なんでもない」

周りのメンバーが励ましても意気消沈したままの千奈美。
しばらくは声をかけ続けていたメンバーたちも、今日は何を言ってもムダだと思ったのか、1人、また1人と帰っていく。
そうしてどれくらい経っただろうか。千奈美が顔を上げたときには、部屋には茉麻以外の姿はなかった。
ずっと見られていたのかと思うと恥ずかしいが、見守ってもらっていたようでどことなく安心したのも事実。
何と言うべきだろう。言葉を探す千奈美に茉麻が声をかける。

「あたしはもう帰るけどさ、ヤなことあったなら屋上で空でも眺めていったら?」
「空?でも…」
「七夕だし、なんかいいことあるかもよ」
「うん…」
「ほらほら、ちぃの武器は笑顔でしょ」
「うん…」
「笑って笑って♪ほらどう?この新作変顔」
「…ぷっ」
「あ」
「お、面白いよ。面白いってまぁさん…ふふふ、あはははは」
「よしよし。笑った笑った。じゃあまたね」
「うん。ありがとね、まぁさん」

部屋を出て行く茉麻。残った千奈美もまもなく荷物をまとめ、退室する。
屋上への階段へ向かう途中で笹の前を通った時、見覚えのある字の書かれた短冊を発見する千奈美。

「あ!千奈美の短冊!」

なくなったと思っていた短冊がこうして見つかり、しかも笹の一番上にかかっている。不思議な出来事に驚く千奈美。
じゃあ、じゃあ、もしかして…!はやる気持ちを抑えきれずに、階段を駆け上がる。屋上の扉を開く。そこにいたのは…

「熊井ちゃん!」
「あ、ちぃ」
「なんでここに?帰ったんじゃ…」
「なんか短冊に誰かが一緒に空を見たいって書いてたから」
「あぁ、それは…」

恥ずかしいから名前書かなかったけど千奈美のだよ、そう言おうとしたが、何か恥ずかしい心地がして踏みとどまる。
そうして千奈美が言いよどんでいるうちに踵を返そうとする友理奈。

「でも誰もいないようだから帰ろうかなって」
「あ、じゃあ、じゃあ…」
「じゃあ?」
「じゃあ…せっかく来たんだし、千奈美が一緒に見てあげるよ」
「ちぃが?」
「なに?千奈美じゃイヤ?」
「…ううん、じゃあ一緒に見よっ」

屋上のベンチに並んで腰掛け、空を眺める2人。少しの間を置いて千奈美が口を開く。

「ねぇ熊井ちゃん」
「なに、ちぃ」
「願い事ってさぁ、叶うんだよ」
「願い事?ちぃも何かお願い事したんだ?」
「うん。えっとね…」
「うん」
「…やっぱいい。秘密」
「なんだよそれ~ヘンなの」
「ヘンでもいいもん」
「ほんと、ヘンなちぃ」
「へへへ」

友理奈の肩に頭をもたせかける千奈美。友理奈も千奈美の肩に手を回して優しく抱く。
そんな2人を見上げて微笑むように、外に出された笹につるされた短冊がわずかに揺れる。
その中の1枚にはこう書かれてあった。

「熊井ちゃんと2人でお空が見られますように」



~FIN~
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