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  YURI-Scene7- 

YURI 2006/08/07 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
連続更新二日目。心に迷いが生じ苦悩する友理奈をあの人が救います。

2006年8月2日掲載。

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「どうしたの熊井ちゃん、元気ないよ?」
「悩み事とかあったらいつでもうちらに言っていいから」
「熊井ちゃんが暗いとうちらまでなんかテンション下がっちゃうしさ」
「Berryz工房の仲間じゃんか!どんな悩みでもどーんと打ち明けちゃえ!」

みんなの優しい言葉。ありがたい言葉。でもあたしはそれに作り笑顔で「なんでもないから」とごまかすことしかできなかった。
こんなの初めて。こんな気持ち…そりゃあ友達とケンカしたり、気まずくなったりしたことはあったけど、
こんなに真剣に悩むのがこんなに長く続いたことはなかったと思う。そう、あの日からずっとあたしの気持ちは晴れないまま。
おかげでみんなに心配をかけちゃってるけど、やっぱり相談できない。でもこのままじゃみんなに迷惑かけちゃう。それは間違いない。



もう、Berryz工房、やめた方がいいのかな…



そんなことも思い始めたある日のこと。

「今日久しぶりに会わない?前のコンサートの感想とかいろいろ話したいし」

あたしの携帯に一通のメールがきた。送り主は、なんと舞波。
去年の秋に別々の道を歩み始めた、でもBerryz工房の最初の1年半を一緒に駆け抜けた仲間の舞波。
Berryz工房を離れた後もみんな連絡を取り合っているけれど、さすがにコンサートとかで忙しい時なんかはそこまで余裕がない。
舞波ももちろんそれはわかっていて、そんな時にメールしてきたり、まして会いたいって言ってくることなんてまずないのに…どうしたんだろ。
不思議に思ったけど、他のメンバーと会って話すたびに苦痛に思っていたこともあって、レッスン後に会おうって返事を送った。

その日のレッスン後、真っ先に着替えて真っ先にレッスン場を飛び出し、舞波との待ち合わせ場所のファミレスに向かう。
たまに他のメンバーとも来たりするお気に入りのファミレス、舞波は昔のまま、同じ席にいた。まるであの頃に戻ったみたい。

「ごめん、待った?」
「さっき来たとこだから大丈夫ー」

微笑みながら答える舞波。ほんとに変わらない。あ、いや、ちょっと…大人っぽくなったかな?
見た目はそんなに変わんないけど、自信と言うか、堂々としたものを感じる。自分の信じた道を突き進んでいる人って感じ。
それに比べてあたしは…また思い出して、また苦しくなっちゃう。でもそんな姿見せちゃダメだよね。
レッスン後でおなかもへっていたので、まずはごはんを食べて、その後いろんなとりとめのない話。
なんだろう、近況報告ってやつかな。コンサートの話、学校の話、話題はいろいろ。
でもそうやって話していても、あたしの心の一部はずっとずっと"それ"にとらわれていて…

「やっぱり元気ないね」

しばらく話した後、舞波にそう切り出された。気づかれてた!でも"やっぱり"って…?

「桃がね、教えてくれたの」
「ももちが?」
「うん…あっこれ言っちゃまずかったかな」
「そこまで言ったならいいじゃん、なんて言ってたの?」
「熊井ちゃんが悩んでるみたいだから助けてほしいって」
「…」
「メンバーの誰にも言えないみたいだから、あたしに助けてほしいって」
「…そっか」
「ねぇ、何があったの?熊井ちゃんがそこまで悩むなんてどんなこと?」

舞波の視線には強い力があって、目をそらすことはできそうになかった。
あたしは目で"聞かないでほしい"って訴えたけど、舞波は相変わらずひたすらあたしを見つめてくる。
伝わったのか伝わらなかったのか…たぶん伝わってるんだろうな。でもその上であたしを問い詰めてるんだ。

あたしは降参した。そして舞波に何もかも話した。
これまでみんなとしてきたこと、今あたしの気持ちが揺らいでいること、その他いろいろ。
舞波は黙って聞いていたけど、最後にあたしがBerryz工房をやめようかと思っていることを聞くと、とたんに厳しい顔になった。
その変化に戸惑うあたしの前で、低い声で舞波が口を開く。

「ふざけないで」
「えっ?」
「あたしはやりたいことがあって、なりたいものがあったから、悩んで悩んで、それでBerryz工房を卒業したの」
「う、うん」
「なのに熊井ちゃんは何?ただ逃げてるだけじゃん!そんなんでやめるなんて言わないで!」
「だって…」
「見損なったよ、正直」

最後はとびっきり冷たい声。やっぱり話さなければよかった。
せっかく相談に乗ってくれた舞波も、これであたしのこと軽蔑して、離れていっちゃうんだ。
そして、やっぱりあたしのやってることはみんなに迷惑をかけてるんだ…
さらにヘコむあたし、舞波はしばらく無言でいた。でもふぅっとため息をついて、また話し出す。

「…熊井ちゃんはさぁ、優しいからBerryz工房みんなのことばっかり考えているみたいだけど」
「…?」
「熊井ちゃんはどうなの?」
「え?」
「メンバーひとりひとりとの時間を過ごした時、熊井ちゃん自身は真剣じゃなかったの?」
「…」
「みんなのためみんなのためって言うけど、その前に自分自身の気持ちをちゃんと考えなよ」
「あたし、自身…?」
「そう。他の人と一緒にいたときの熊井ちゃんの気持ちはニセモノだったの?」
「そ、そんなことない…」

反論するあたし。でも動揺はまだ収まりきってなくて、かすれたような声しか出ない。
それで怒ったのか、舞波はさらに厳しく追及してくる。

「どうせ誰ともいい加減な気持ちだったんじゃないの?」
「そんなことないもん!あたしはみんなのこといつだって真剣に想ってたもん!」

思わず声が大きくなっちゃう。でも本当のこと。あたしの気持ちに嘘はなかったよ。
佐紀ちゃんから梨沙子までいろんな人といろんなことしてきたけど、でもいつもあたしは相手のことちゃんと想ってた。
佐紀ちゃんとのことだって、ももちとのことだって、ちぃとのことだって、まぁさんとのことだって、
みやとのことだって、梨沙子とのことだって、そして今目の前にいる舞波とのこの瞬間だって…全部真剣。
みんなみんな大切な人たち。粗末にしたことなんて一度もない。絶対にない。誓って。
その思いをこめて、舞波を見つめ返した。

永遠にも感じられる何秒かが過ぎた後…

「うん、もう大丈夫みたいだね」

舞波の顔に微笑みが戻ってきた。また何秒かした後、気づいた。

「あー!もしかしてあたしを…その、試したの?」

相変わらず舞波はいたずらっぽい微笑を浮かべている。完璧に舞波の思い通りだったみたい…
さっきの低い声はほんとに別人のものだったとしか思えない、いつもの舞波のあったかい声が戻ってきてた。

「熊井ちゃんがみんなひとりひとりのこと大事にしてる、思いやりがある人だってのはわかってたもん」
「いやぁ…そんなことは」
「あるの!」
「は、はい」
「なのに自分でそこイマイチわかってないみたいだったから、ちょっとね」
「舞波…」
「あと、本当は誰が好きかも」
「!」
「みんなのことを思い出してたみたいだけど、いるんでしょ?特に気になる人が」
「あ、えっと…うん」
「じゃあ今から想いを伝えに行かなきゃ」
「…え?」
「好きな人に、他のみんなに、それぞれさっき思ったままを言えばいいんだよ」
「でも…恥ずかしいし」
「みんなを心配させた熊井ちゃんには一刻も早くそれを解消する義務があると思うけど?」

頭がいいだけあって、舞波にはこういう言い方が似合ってる。全くスキのない感じ。
そしてこっちも、ここまで言われちゃ他に選択肢はないよね。

「…うん!じゃあ行ってくるね!ありがとう!」

あたしは代金を置いてレストランを飛び出した。舞波が手を振って見送ってくれたのが最後に見えた。本当にありがとう、舞波。
そして…まだみんな残ってるかどうかわかんないけど、でもとにかく行ってみるしかないもん。
一生懸命走る、走る、走る。レッスン場へとひたすら走る。他のことは考えずにひたすら走る。

そんなんだから、あたしがこの日の舞波の事を知ったのはずっと後になってからだった。

「お待たせ。今から熊井ちゃんがそっち行くから、みんなもうちょっとだけ待ってて」

この日舞波がももちを通してみんなの期待を受けてて、そしてこのメールを打つことでそれに完全に応えきったって事を。

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