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  YURI-Scene8- 

YURI 2006/08/07 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
連続更新最終日。迷いに迷った末、自分の気持ちに気づいた友理奈は…?

2006年8月3日掲載。

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「熊井ちゃん!」
「熊井ちゃんだ!」
「おかえり!」
「待ってたよ!」

レッスン場に戻るとみんなが迎えてくれた。もうレッスン終わってずいぶん経つのに、みんながいることにびっくり。
もしかして…あたしを待っていてくれたの?そういえばさっきの舞波もみんなが待ってるのがもうわかってたみたいな感じだったし…

「ただいま、みんな」

なんだろう、一言言っただけでもう胸がいっぱい。みんなに「ありがとう」って言わなきゃいけないのに。いろいろ伝えることがあるのに。
みんながあたしを見つめる。あたしの言葉を待ってる。緊張する。
何から話そう、どうしよう、どうしよう、この空気…泣きそう!

でもその時、舞波の言葉がよみがえる。

"好きな人に、他のみんなに、それぞれさっき思ったままを言えばいいんだよ"

そうだ。考えてもダメ。あたしがみんなに思ったままを伝えればいいんだ。
いったん目を閉じて深呼吸を済ませた後、改めてみんなを見回す。
あいかわらずみんなの視線が集中してる。たった6人のメンバーしか聞いてないのに、コンサートの何倍もの圧力を感じる。
秋には舞台もやることになったけど、これ以上のことなんてきっとないんだろう。
だから…今この瞬間を乗り越えればあたしにはもう怖いものなんてないはず。がんばらなきゃ!

あたしは決心した。

「あたし、みんなに言わなきゃいけないことがあるの」

みんなじっと見守ってくれてる。さっきまではそれで緊張してたけど、心を決めた今はむしろ安心感を与えてくれる。
そんなみんなに支えられて、あたしは話しだした。

「みんな知ってると思うけど、あたし悩んでた」

打ち明ける。ひとつひとつ、思ったことをそのまま。



最初はみんなといろんなことして、ただただ楽しくて、それでせいいっぱいで、それ以上のこと何も考えてなかった。
でもこないだ梨沙子と会って、一途な気持ちを感じたら…なんか、自分がすごい浮気者みたいに思えてイヤになったの。
でも、それなら今までどうしてたらよかったんだろう、ってずっと悩んでた。
"もしもあの時"っていうのが後から後から浮かんできて、ずっと考えてた。でも答えが出なくて。
それで…こんなあたしじゃみんなに絶対迷惑かけちゃうから、Berryz工房をやめようかとも思った。
でも舞波に言われたの。それは逃げだって。そんなんじゃダメだって。ちゃんと自分の気持ちと向き合えって。
そのおかげで…あたしがいつもみんなのこと大好きだった、気持ちにウソはなかった、ってことを思い出せた。
もしかしたら最初から悩む必要なかったのかもしれない。あたしが勝手に悩んでただけで、今まで通りでよかったのかもしれない。
でも、それでもあたしはやっぱりけじめはつけたいと思う。はっきりさせときたいと思う。
ただ…○○ちゃんが好き、なんてはっきり言ったらその子以外の、あたしのこと想ってくれてるみんなを傷つけるんじゃないかとも思う。
だからどうしたらいいのか、今になってもそれだけがわからないの…



あたしの言葉、思っていたことはここまで。最後まで真剣に聞いてくれるみんな。あたしはもうこれだけでもありがたくてたまらない。
そして、10秒くらい経ったころかな…

「いいよ、言って」
「佐紀ちゃん…」
「熊井ちゃんがあたしたちのひとりひとりを大切に思ってくれてたのはよくわかったから、あたしたちはそれで十分幸せだよ」

佐紀ちゃんが優しい声を出す。他のみんなも微笑んでそれに続く。

「あたしはくまいちょーが今他の誰のこと好きでも、いつか必ずあたしのものにする自信あるもん」
「今度は熊井ちゃんが幸せになってほしいの。好きな人と幸せに。また笑顔の熊井ちゃんとお手紙交換したいし」
「それにうちらも熊井ちゃんの口からその人の名前聞きたいし。ね、梨沙子」
「うん。うちも聞きたい」

みんな優しく微笑んであたしの言葉をまた待ってくれる。ありがとう。ほんとにありがとう。
あたしはもう一度決心した。今度は想いを伝える決心を。
今まで何度も口にしてきた名前、でも今一番あたしが言わなければならない名前。



「ちぃ」



みんながいっせいにそっちを見る。ただひとり、みんなよりちょっと後ろでうつむいていた女の子の方を。
そして、ちぃもきょとんとした顔でこっち見てる。信じられない、って顔。

「え、あた…し?」

かすれるような声がちぃの口から出てきた。あたしは思わず"こくん"とうなずく。
ゆっくりとちぃのところに歩いていく。ちぃはまたうつむく。そしてつぶやく。

「絶対…選ばれないと思ってた…」

いつも元気なイメージのあるちぃ。でも実はちょっとしたことですぐ不安になったりする繊細なところもあるんだよね。
本当に不安にさせちゃってたみたい。ごめんねちぃ。あたし、がんばるね。
だからちぃと向き合う。みんな見てるけど、そんなの気にしてられない!

「あたし、やっぱりちぃが好き。他の人と悩まなかったわけじゃ…正直、ないけど」
「…浮気者…」

ちぃが漏らした一言に、あたしは慌てちゃう。

「あ、あのね!でもやっぱりちぃが一番好き。一緒にいてすごい楽しいし、ときどき手がかかるけどそこがかわいいと思うし!」
「あ、あの熊井ちゃん」
「実はすっごい女の子らしくてかわいいとこあるし、あと、あと、それから…!」
「く、熊井ちゃん!もういいから!ちょっと言ってみただけだから!」

真っ赤になって慌ててあたしの口に手を当てるちぃ。なんかみんなもくすくす笑ってる。
さっきまでとは別の意味で恥ずかしい…これじゃちぃのことおっちょこちょいとか言えないかもなぁ…。
そんなことをちょっと思っていた間に、ちぃが手を離す。そして真剣なまなざしで聞いてくる。

「熊井ちゃん…ほんとにあたしでいいの?」
「うぅん」
「え…?」

また不安顔になるちぃ。でも想いはできるだけ正確に、はっきり伝えたい。だから言うの。ここで言うの。

「ちぃが、いいの。あたしがちぃと一緒にいたいの」

短いけど、これがあたしのほんとの気持ち。伝わったよね…
あれ?でも一瞬だけほころんだちぃの顔は…今度はちょっとムッとした感じ。ど、どうしたんだろ。

「ズルいよ熊井ちゃん。かっこよすぎだよ」

視線をまたまた足元に戻して、ちぃがつぶやいた。

「ち、ちぃ?」
「これまでさんざんあっちこっちで遊んでたくせに…」
「ごめんなさい…」
「ムカつく…だから」
「だ、だから?」
「これまで浮気された分、取り戻しちゃうんだから」
「え、じゃあ…」

ちぃが顔を上げる。そして…

「あたしも好きだよ、熊井ちゃん。ずっと一緒にいようね」

今度こそひまわりのような笑顔を輝かせるちぃ。
胸がきゅんとする。あたしは思わずちぃを抱きしめた。

「ちぃっ!」
「熊井ちゃんっ!」

抱き合うあたしたち。しばらくはそのままで、部屋は静かだったけれど…

ぱちぱちぱちぱち…

拍手が聞こえてきた。びっくりして周りを見ると、みんなが拍手してくれてる。

「おめでとー」
「なんか妬けるんだけどー」
「そんなこと言わない言わない」
「なんか見てるこっちが幸せになれちゃうね」
「ひゅーひゅー」

さんざんひやかしながらのお祝いの後、佐紀ちゃんが一歩前に出てきて、あたしに話しかける。

「おめでとう熊井ちゃん。本当によかったね」
「うん、ありがとう…」
「そんな熊井ちゃんに、ちょうどいいプレゼントがあるんだ」
「え…何?」
「ほら、あれ」

佐紀ちゃんがレッスン場の入り口を指し示す。するとそこからケーキの載った台を運んでくるまぁさんが。
きょとんとしているあたしに、佐紀ちゃんが得意げに言う。

「今日、熊井ちゃんの誕生日でしょ」
「…あ!」

今頃気づいた。毎日毎日悩むあまり、日にちの感覚もなくなってたみたい。
そっか、あたしの誕生日だったんだっけ…13か…ろうそくも13本立ってる…。

「だから、お祝いしようとケーキ用意してたんだけど、熊井ちゃんの悩みが今日解決してほんとよかったよね、桃」
「そー!くまいちょーが今日戻ってこなかったらどうしようって思ってたもんね」

そうか…あたしは危うくまた一つ迷惑かけるとこだったんだ…みんな、ありがとう。
そんな感動しているあたしと、横に立つちぃの前にまぁさんがケーキを持ってくる。

「まぁさん…ありがとう」
「へへっ、ほんとはね、ケーキ運ぶのは千奈美の役だったんだけど」
「あ、ごめん。忘れてた」
「いいよいいよ。こないだのイベントであたしの誕生日ケーキ運んでもらったし、そのお礼」

その間にも雅と梨沙子が仲良くジュースをコップについでいたり、ももちがお菓子を出してきたり…
いつの間にかお祝いの準備が整っちゃってたみたい。
ハッピーバースデーも歌ってもらって、ろうそくを吹き消す。
そして、コップを手にした佐紀ちゃんが声をあげる。

「じゃあ、ひとつオトナになった熊井ちゃんに乾杯!」
「おめでと~!」

コップをぶつけて危うくジュースがこぼれそうになる。あたしの涙もこぼれそう。
でも今こぼすのはあたしのこれ以上ない素直な気持ち。

「ありがとう。あたし、Berryz工房になれてよかったって思ってる。みんなと会えて本当によかった!」



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