スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  恋の呪縛―茉麻と舞波― 

恋の呪縛 2006/08/05 |このエントリーを含むはてなブックマーク 
一連の『恋の呪縛』ものの中でもちょっと毛色の違う作品です。

2004年11月7日掲載。

.

「はい。たくさん食べるんだよ」

毎朝学校のウサギにごはんをあげて、小屋の掃除をしてあげるのが飼育係のあたしの仕事。
ウサギたちもすっかりそれをわかっているのか、あたしの姿を見ただけで寄ってくる。みんなかわいい。あたしはこの仕事がとっても大好き。とっても楽しい。

でも、今のあたしにはもう一つ楽しみがあって…

「ふぅ。今日もみんな元気みたいだね。いい子ちゃんだねー」

隣の小屋から弾んだ声が聞こえてくる。あたしはそっちを見る。いや、声がする前からそっちをちょこちょこ見てはいた。
だってその声の主こそが、あたしのもう一つの楽しみなんだもの。

声の主がこちらの視線に気づく。

「茉麻ちゃん!今日もみんな元気だよ!そっちはどう?」
「え?えーと、あ、みんな元気だよー」
「そっかー。じゃあこれ片付けたら教室行こうね」

そう言って声の主―舞波ちゃんは小屋の掃除の仕上げに戻る。でもあたしは相変わらず"そこ"から目を離さない。

かわいいなぁ…。

思わず手を止めて見つめてしまう。ウサギ小屋の掃除をしようとちょこちょこ動く舞波ちゃん。
でもそんな舞波ちゃんこそがなんか小動物みたい…舞波ちゃんにはニンジンとか似合うかな…あ、でもひまわりの種とかも捨てがたいかも…

「…ねぇ、ねぇってば!茉麻ちゃん!まーあーさーちゃん!」
「…わわっ!」

び、びっくりした。だっていきなり目の前に舞波ちゃんがいるんだもの。いつのまに…?

「もー、またぼーっとして。いくら呼んでも小屋から出てこないからどうしたのかと思ったよ!」

そっか、舞波ちゃんのことを考えてたらつい…って、これってどういうことなんだろ?あたし…ヘン?まぁいいや。

「ごめんねぇ、ちょっとぼーっとしてて」
「やっぱりそうかー。まったくー」

笑う舞波ちゃん。えくぼが素敵。やっぱりかわいい…なんだろう、ちょっとドキドキしてきた。

「ねぇねぇ、茉麻ちゃんは好きな人とかいたりするの?」
「え!?」

ドキドキがいっきに3倍に跳ね上がった。す、好きな人?
そ、そんなのあたしにはいないけど…強いて言うなら…って、な、なに考えてるの茉麻!?

「あのねぇ、あたし…告白するの!」
「え…え…えっと…」

もはやあたしの頭は全然ついていかない。

「こ、告白って…あの告白!?」
「どの告白かわかんないけど…そう!」

舞波ちゃんには前から好きだった男の子がいて、その人に今日告白するらしい。
あたしはもう何が何やら。もはやただただ聞く側に回っている。

「でもさー、実はまだ一度も話したことないの」
「え!?じゃあどうやって告白とかするの?」

すると舞波ちゃんはポケットからスッと何かを取り出す。

「これこれ!この手紙でうちの教室に呼び出しちゃうの!」

彼の靴箱に手紙を入れて、呼び出そうということらしい。

「がんばるぞー!」

意気込む舞波ちゃん。意気消沈のあたし。そしてあたしの目の前で舞波ちゃんは「彼」の靴箱に手紙を入れた。
いつもと全く違う結末の飼育当番は終わって、あたしたちは教室へとあがっていった。

その日の授業は全然頭に入らなかった。それどころか給食当番の時もぼーっとしておかずをこぼしたりする始末。もう…さんざんだった。

放課後になって、みんながクラスを後にしていく。
あたしは心の中ではずっと残っていたかったんだけど、目が合った舞波ちゃんに「あたし、やるからね!」という感じのウインクをされてはどうしようもない。
あたしも教室を後にした。

廊下を歩いて、階段を下りて…とぼとぼと校舎の中を進むあたし。下駄箱に着いて、ふと「彼」の靴箱に目をやる。
靴はまだあった。ということは「彼」は校舎の中にいて、恐らくは今頃は…そう思うと胸が締め付けられるように苦しい。
考えちゃダメ!舞波ちゃんは、舞波ちゃんは大切な友達なんだから!それでいいじゃない…!

あたしは自分の靴箱に向かった。これ以上学校にいても仕方がない、帰ろう…。
そう思って靴を履き、外へ。外にはまだ何人かの生徒がいた。何となくそちらへと目を移すと、彼らの持つ白い袋が目に入る

「…あ」

給食当番のエプロンを教室に忘れてた。洗うのを忘れると来週もう一回当番になっちゃう…。
でも袋があるのは教室…教室は、でも今は…どうしよう…

考えた末、あたしは…教室に向かった。袋を取って、すぐ帰ればいいんだ。そうだ。何も後ろめたいことなんてない。
そう自分に言い聞かせて、教室に向かった。

でもやっぱり…後から考えれば、あたしはこの時教室に行くべきじゃなかった。

教室には誰もいなかった。舞波ちゃんはどこに行ったんだろう?
席を見るとカバンは置いてあった。どこか他の場所にしたのかな?いろいろ考えそうになったけど、取りあえずは袋を持って帰るのが先決。
給食袋をランドセルの横にかけて、教室を出ようとしたそのとき

「あ、あの、手紙読んだんだけど…」

教室の入り口に一人の男子が立っていた。あたしが話したことのない男子。
でも胸の名札の名前には、どこかで見覚えがあった。どこかと言うか、朝とか、あとついさっきも…そう下駄箱で…

あ!

「この教室にこの時間に来て、って…」

「彼」だった。頬を紅潮させつつも、おずおずと聞いてくる。でもなんで?舞波ちゃんは?舞波ちゃんの手紙を読んだんじゃないの?

「名前書いてなかったけど、まさか須藤さんだったなんて…でもよかった。僕も須藤さんにずっと伝えたいことがあったんだ」

舞波ちゃんはどうやら名前を書き忘れたらしい。で、あたしはどうやら勘違いされてるらしい。なるほど。
…って、そんなに冷静に考えてる場合じゃない!早く誤解を解かないと!

「あ、あのね、あたしは…」
「僕…僕、実は前から須藤さんのこと好きだったんだ!」

…え?

あたしは、硬直した。

男の子にそんなこと言われたことなかったってのもあるけど、よりによって今そんなこと言われても…。

「須藤さん、いっつも飼育係でがんばってるし、ウサギとかの世話をしている時すごく楽しそうな顔してて…すっごく優しいなって思って…」
「え、えーと、その…あ、ありがとう」

思わずお礼を言ってしまう…って何してるのあたし!そんな場合じゃないのに!

「須藤さんを…守りたいんだ!」

強く迫ってくる彼。な、何か答えて、早く誤解を解かないと…!
でも、それに答えたのはあたしではなくて

「どういう…ことなの…?」

教室の入り口に立ちつくす舞波ちゃんだった。そこには朝見せたあの笑顔はどこにもなくて、目には光るものが溢れていて…
違うの舞波ちゃん!これは誤解なの!でも…でもどうやったらわかってもらえるんだろう?
あぁ…どうしよう。頭が働かないよ…何か悪い呪いにでもかかったみたいに…


告白なんてしないでよ
付き合い方も知らないくせ
どうやって私守るのよ
根拠も何も無いくせに

大人ぶるのやめて
真面目顔もやめて
女友達が君の事
好きだと知ってるのよ私

教室には何もないわ そんな強く迫らないで
女同士友情って こんなことではかなく砕けるの
恋の呪縛

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。